トッカグンとの遭遇。

僕は陸も海も空も辞めたダメ元自衛官

泳げない人だらけのプール。

 海上自衛隊の教育隊では水泳訓練がある。
 まず最初に新入隊員がどの程度泳げるのか?と言う計測の様なことが実施される。
 海上自衛隊と言われる位だから、そもそも泳げる者だらけ…と言うのは、大きな誤解だった。
 当時の僕の目の前で、とある水泳教官と新入隊員がこんな言葉のやりとりをしていたのである。
 
 教官「まずは全員、ウォーミングアップ代わりにクロールで指示した距離を泳いでもらう。」

 新入隊員「あの…泳げないのですが…」

 教官「わかった。まずは指示した通りの距離をクロールで泳げ。」

 新入隊員「ですから、泳げないんです。」

 教官「だから、わかった。と言っているだろ。とりあえず泳げ。」
 聞いている側の僕からしてみれば、会話として成立してないと思ったのだか。

 新入隊員は話しに、らちがあかないと思ったのか、しぶしぶプールに飛びこんだ。
 すると、本当に全然泳げなかったようで、僕の目の前でブクブクと沈んでいったのである。
 教官は驚いて「誰か!助けてやれ!」と指示すると、泳げる新入隊員が数人飛びこみ、溺れた同期を助けに入り、一命をとりとめたのである。