住所不定・無職…確定。
「自衛隊を退職した後は、俺の実家にしばらく泊まれば良いよ。」
同じタイミングで自衛隊を退職した同期のその言葉に甘えることにした。
僕らは駐屯地を出た後、電車に乗った。
とある駅で降りたった瞬間だった。
一緒にいた彼は、いきなり駅のホームでタバコを吸い始めた。
そして「東京は最高だ!なにしても放っておいてくれる!」と口にした。
ぼくは、あまりのマナーの悪さに一瞬目を疑った。
だが、これから実家に泊めてもらう身の僕としては、正直口出しはしにくかった。
とりあえず、その場で実家はどのあたりか、そう言ったことから聞くと…
「あー。やっぱり実家は狭いし、知らない人をいきなり受け入れるのは、親も抵抗あると思うし、なかなか難しいものもあるんだよねー。」
と、実家に泊められない。みたいなことを遠回しに言ってきた。
彼の駐屯地を、出てからのあからさまな言動の変化に彼の本性を見た気がした僕は、その場で、彼とは別れた。
こうして、ニュースで見かけるような肩書き「住所不定無職」になった。