レンジャー隊員だった区隊長。
自衛隊の腕立て伏せは、一般の人、あるいは学生の部活動でやっているものとは、かなり違いがある。
両腕は肩幅程度に開き、両手で「ハ」の字を作る。
体は一直線。体を下に下げる時には、そのまま姿勢を変えず、腕だけの力で体を上げ下げする。
ちなみに体を下げた状態の時、あごは地面につける。
40回。いや、30回で普通の男性なら、きつくて姿勢がくずれてくる。
連帯責任で腕立て伏せをやらされる時、何回やれとは言われない。
ただひたすら、腕立て伏せをさせられるのだ。
疲労で姿勢が崩れてきたら、すぐに班長クラスの上官が近づいて来て、怒鳴りちらすのだ。
ある上官は、怒鳴りちらし、またある上官によっては、軍靴で蹴って来る人もいた。
腕立ての姿勢自体が保てなくなると、腕や足が痙攣したり、腰が痛くなってくる。
体中から汗が吹き出て、腕も動かない。
それでも、「その場に立て!」
その号令がかかるまでは、延々と、もがき苦しむしかないのだ。